ひとり旅にアート心も入れて by 塩見有紀子

第1回 アートってどこで見る?(東京の場合)

せっかく東京に住んでいるのだから、山ほどある東京の美術館や博物館にたくさん行こう!と思いつつも、このご時世、建物の中には入りたくない、もしかしたら密空間かも?と心配する方もいるかと思います。実際は、大きな展覧会や国立の美術館は日時指定制になったところが多く、以前では考えられないほど美術館は快適な鑑賞空間とはなっています。

それでも、もっと気軽にアートを楽しみたい、美術館は少し敷居が高いと思われている方に、身近なアートをご紹介します。

それは、美術館やギャラリーではなく、公園や空港、駅など公共の場所に置かれたアート作品のこと。普段から通っているとあまりにも見慣れた景色だから見過ごしていることもあるかもしれませんが、ちょっと目線を変えてみると実はこんなところにアートが!と発見できるはずです。

例えばこちらは、都営地下鉄大江戸線築地市場駅改札内にある片岡球子の《国貞改め三代豊国》の大型美術陶板です。片岡球子(かたおか たまこ)は、昭和から平成にかけて活躍した日本画家で、103歳で亡くなるまで精力的に作品を作っていました。歌舞伎役者や江戸の絵師などを題材にした人物画のほか、富士山シリーズなど、型破りな構図と大胆な色遣いは、圧倒的な存在感があり、私の好きな画家のひとりです。駅は意外とアートの宝庫なんですよ。

通り過ぎるのはもったいない!大型作品なのでぜひじっくり鑑賞を

次は、東京メトロ半蔵門線と銀座線三越前駅の改札外の地下コンコースにある、絵巻物《熈代勝覧(きだいしょうらん)》(ベルリン国立アジア美術館蔵)のレプリカ。約200年前、11代将軍徳川家斉の頃の日本橋辺りが描かれた絵巻物で、三井越後屋(後の三越)や日本橋にあった魚市場など、当時の日本橋の活気ある様子を感じられます。薬種問屋や魚の立売、店頭での蒲鉾づくりなどが描かれている詳細な江戸の風俗画なので、見始めるとあっという間に時間が過ぎるほど興味深いのです。

江戸時代の日本橋の庶民の暮らしがありありと描かれている

呉服商であった三井家の越後屋の大店(おおだな)。のれんに「三」の文字

そして究極の身近なアートといえば、ポストカードかもしれませんね。私自身は美術館へ行くとついポストカードを買ってしまうのですが、その時の気分や季節に合わせて自宅のポストカードの飾り替えをしています。

上段は、2016年開催の「マリメッコ展」(Bunkamuraザ・ミュージアム/渋谷駅)、下段は2016年開催の「PARIS オートクチュール展」(三菱一号館美術館/二重橋駅)と、中央が片岡球子《富士山シリーズ》

いかがでしたか?実はアートってとっても近くにあるものなのです。私自身、ひとり歩きの時は何かおもしろいものがないかと脇目をふりつつ(笑)街を歩いています。

次回は、《熈代勝覧》に描かれた日本橋に8月に新しく完成したばかりの金魚のミュージアムをご紹介予定です。

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