歴史ある遺跡やおおらかな自然、そして美食や笑顔を絶やさない人々......。
さまざまな魅力を秘めるタイ王国をフォトグラファーの yOU(河崎夕子)さんが4回にわたってレポートします。
********************************************************
タイ/スコータイエリアの魅力、第2回目はスコータイ県内北部に位置するスィーサッチャナライ地域の村落が取り組んでいる地域コミュニティ開発のプロジェクトに注目します。
近年日本各地でも話題になっている地域コミュニティのあり方。地域の特性を最大限に活かしていかに村を存続させるかは、まずはその自然や文化を熟知することから始まると言われています。今回訪れたスィーサッチャナライ地域では、村人が一丸となってコミュニティ開発に取り組んでいました。
昔から林業が盛んだったこの地域は、象と共に暮らしてきた歴史があります。かつて象は木材の運搬に欠かせず、この村の男性の多くが象使いでした。ところが1989年政府によって森林伐採が規制されたことで、象は活躍の場を失ってしまいます。
そんな象の暮らしを守ろうと設立されたのが、このスィーサッチャナライ村の象保護センター。このセンターの代表で75歳のムアングさんは32年にも渡ってこの活動を続けています。歳を重ねて親族やお孫さんにその運営を任せつつありますが、このセンターでは現在6頭の象を保護しています。今回はこのセンターを訪問し、ムアングさんや可愛いメス象2頭に出会い、実際に餌やり体験をしました。
・代表のムアングさん。長きにわたってこの村で象の保護に携わる。
・現在は親戚の男性陣が象使いを担っている。奥から2頭のメス象が出てきてくれた。
・奥様とお孫さんたち。言葉は通じずともカメラを向けると笑顔で応えてくれた。
保護センターの一角にはホームステイができる宿泊施設も用意され、象と生活しながら餌やりや水浴びの手伝い、また象に乗って村を散策するアクティビティを体験することもできます。
このように近年になって観光客が増えてきている中、その自然と伝統文化を肌で感じて欲しいと敢えて開発をせず、昔ながらの村の様子を保ち続けているのがスィーサッチャナライの魅力の一つでしょう。
それでも6頭の象の餌は、バナナやスイカなど毎日200キロに及ぶとのこと。運営を続けていくのはなかなか困難ながら、象と象を扱う村人たちがいかに共存できるかを考えながら、それが観光につながり、延いては地域活性につながるというスタイルを理想としていました。
・象のランチタイムに立ち会い。渡したバナナは一房ごと一気に口の中へ。
・バナナやスイカなど果物類が主な食事。この量で1頭1食分。
・保護センターとはいえ、家族経営とあってアットホームな雰囲気。象との共存を存続してほしい。
スィーサッチャナライ地域では1990年代からコミュニティ開発に着目して取り組みを始め、1999年からは日本との交流を深めて、そのスタイルを学んでいると聞いて驚きました。日本人を見かけることのないタイ北部の村と、日本の村にそんな接点があるとは到底思えなかったからです。実際に日本への研修旅行を実施したり、女性のための訓練センターも用意され、現在に至るまで、日本のホームステイやコミュニティのスタイルを取り入れているとのことでした。
続いて訪れたバーン・ナートンチャン村では実際に暮らしている村人の自宅での機織りや草木染め体験、環境をそのまま生かしたサイクリングや果物狩りなどのアクティビティプログラムが用意され、地域の暮らしに溶け込むことで、古い生活習慣や文化、伝統工芸品を国内外の観光客に知ってもらおうと約700人の村人が一体となって取組みがなされていることを、実際に肌で感じることができました。
・草木染めは全て手作業で行う。この後泥に浸けて生地を柔らかくする。
・マンゴスチンの皮やマンゴーの葉、クアンの木などが使われている。
・草木染めらしい風合いが美しい。
・長年続けられてきた綿の機織りは女性の仕事。その工程を実際の民家で間近に見ることができた。
・村の典型的な民家。吹き抜けの家屋からはその生活が垣間見える。
・訪れる観光客を暖かい笑顔で迎えてくれる村民達。村全体での取り組みが感じられた。
・たまたま国内から遊びに来たサイクリング中の若者達に遭遇。
・木工の民芸品屋で。手作りの楽器を弾いて見せてくれたのはこの店のご主人。
・草木染めの施設に併設されたショップではパー・マッククローン(泥浸け織物)の衣類や雑貨などをお土産として買うことができる。
・米粉をクレープのように薄く伸ばして蒸したワンタンで野菜を巻き、スープでいただくカオ・パアプ。このエリアで食べられるこの料理は優しい味がクセになる。
取材協力:タイ国政府観光庁
取材・文:yOU(河崎夕子)
次回はまるでアミューズメントパーク?驚きのスコータイ空港についてご紹介します。