鹿児島県のちょうど真ん中に位置する霧島市をゲストライターの垣花幸子さんと旅恋関屋が訪ねました。霧島市は高千穂峰をはじめとする霧島連山の雄大な自然と、その恩恵でもある豊かな温泉に恵まれています。また焼酎や霧島茶、黒酢など名物にも事欠きません。そんな霧島の魅力を前後編で紹介します。前編は「霧島の恵み編」です。
300年の歴史を誇る名湯の宿・霧島ホテル
霧島ホテルが誇る「硫黄谷庭園大浴場」は、硫黄谷温泉を源泉とする源泉掛け流しの温泉浴場。その湯量も1日、8万石(1,400万リットル)!しかも14の源泉から引く硫黄泉、塩類泉、明礬泉、鉄泉と4つの泉質があり、湯めぐりが楽しめる温泉パラダイスです。
一歩、大浴場に足を踏み入れると、硫黄の香りが鼻孔をくすぐり、一気に気分は温泉モードに。一般的な大浴場とは違い、その空間は想像を超えるほどに広大。そこに男女専用ゾーンとフリーゾーンが設けられています。フリーゾーンは、いわゆる混浴ですが、タオル着用OK!家族やカップルで楽しめると評判です。
フリーゾーンには、大浴場内にある唯一の鉄泉「黄金風呂」があります。疲労回復や関節痛に効用があると言われているので、お疲れの男性の方たちは、お見逃しなく!さらに、女性専用ゾーンには、塩類泉の子宝の湯、明礬泉の不老の湯、硫黄泉の美白の湯などがあり、泉質の違いを楽しめます。この他、露天風呂もあり、それぞれ男性は「鉄幹の湯」、女性は「晶子の湯」と文人にちなんだ名前がついています。
実はこちらのホテル、あの坂本龍馬・お龍夫妻ゆかりの宿でもあります。寺田屋事件で傷を負った龍馬が新婚旅行を兼ねて傷を癒しに滞在したそうです。ホテル内には、龍馬が姉の乙女さんに送った手紙(レプリカ)などが展示されています。温泉で癒され、歴史に想いを馳せるひと時をどうぞ。
また霧島神宮の御神木といわれる「霧島めあさ杉」の杉林。遊歩道を散策していると、ムササビや鹿など野生の動物に遭遇することも。
硫黄谷温泉霧島ホテル
住所:鹿児島県霧島市牧園町高千穂3948
電話:0995-78-2121
家族風呂で癒される「日本湯小屋物語」
家族風呂ってご存知ですか?日帰りで楽しむ貸切風呂のことなのですが、霧島には、家族風呂の施設がたくさんあるそうです(霧島市民の中には、自宅にお風呂を作らない家庭もあるそうですよ〜)。
この家族風呂は、日当山温泉郷が発祥の地ということで、日当山温泉郷で最も古い「日本湯小屋物語」にお邪魔しました。こちらは、枕草子やおとぎ話をテーマにしたお風呂が11室あり、なかでも滑り台付きのお部屋は子供たちに大人気だそうです。
ぶんぶく茶釜の湯や羽衣天女の湯など、気になるお風呂がありましたが、今回は「かぐや姫の湯」をチョイス。鍵を受け取って、お風呂に行ってみると…4畳半ほどの休憩室があり、その奥に内風呂と露天風呂が!その露天風呂は、かぐや姫をイメージして地元の大工さんが2ヶ月かけて完成させたという檜風呂。檜の香りに包まれつつ、やわらかな温泉にほっこり。入った後は、身体中がポカポカでお肌もすべすべになっちゃいました。こちらのお風呂は、全室源泉掛け流しです。
人の目を気にせず、家族や友だちなど、気のおけない人たちと、のんびり温泉を楽しめる家族風呂。すっかり気に入ってしまいました。
日本湯小屋物語
住所:鹿児島県霧島市隼人町姫城2486
電話:0995-42-3406
温泉で作る食パン!BOULANGERIE NOEL
「パンを可愛く見せたくて、一昨年、お店を全面リニューアルしました」と話すBOULANGERIE NOEL(ブランジェリ ノエル)店主の津崎さん。霧島市日当山地区の住宅街にある小さなパン屋さんですが、お客さんが後をたたない人気ぶりです。
こちらのパンには、店主さんの並々ならぬこだわりが隠されています。材料の小麦粉は、日本全国からサンプルを取り寄せるところから始め、使用する酵母は、いろいろなメーカーの天然酵母をブレンドして使っているそう。
材料を吟味して、丁寧に作られるパンの中でも一番の人気は、色白の食パン!実は、パンの耳が食べられなかった津崎さんが、耳までおいしく食べられるようにと、焼き時間を短くしているんだとか。さらに、この食パンの秘密はそれだけではないんです。なんと小麦粉をこねる水が飲用できる温泉水!初めは、硬くなってしまったり、膨らまなかったりとうまくいかなかったそうですが、半年かけて完成させました。実食してみると、しっとりとした生地はほんのり甘く、噛むほどに小麦粉のおいしさが口の中に広がります。「毎日食べても飽きないご飯のようなパン」をめざしていると津崎さん。釜から出すのも一苦労するほどの柔らかさも、温泉食パンの特長です。ノエルさんでしかいただけない、極上の食パンでした。
BOULANGERIE NOEL(ブランジェリ ノエル)
住所:霧島市隼人町姫城3-130-1
電話:0995-42-1718
自然に抱かれた神秘のスポット 霧島神宮
霧島のパワースポットとして知られる「霧島神宮」。もともとは、天孫降臨の地として知られる高千穂峰と火常峰(御鉢)の間にある背門丘にあったそうですが、霧島山の噴火による焼失と再建を繰り返し、約300年前(1715年)に、第4代藩主・島津吉貴が現在の場所に寄進したそうです。格調高い朱塗りの拝殿と本殿は、斜面を上がるように登り廊下でつながる珍しい造りになっています。天照大神の孫であるニニギノミコトが祀られています。境内には、御神木をはじめ、さざれ石や亀石、神聖降臨之碑などがあり、お参りの後は、パワーをいただきながら、のんびり散策するのがおすすめです。
霧島神宮
住所:霧島市霧島田口2608-5
電話:0995-57-0001
狛猪がお出迎え!和氣(わけ)神社
奈良時代に活躍した和気清麻呂を祀っている神社ですが、こちらは狛犬ならぬ狛猪が鎮座しています。道鏡により配流されたおり、宇佐八幡宮に参詣するために豊前国に入ったところ、どこからともなく300頭の猪が現れて、清麻呂を刺客から守ったという逸話から、猪は清麻呂の守護神とされているそうです。境内には、白いイノシシ「和気ちゃん」もいました!ちなみに、こちらは交通安全、学問、建築の神としてご利益があるそうです。
住所:霧島市牧園町宿窪田3986
電話:0995-77-2885
伝統と革新の技が光る「美の匠 ガラス工房 弟子丸」
江戸末期に誕生した「薩摩切子」は、島津斉彬が外交品用にと作らせたものが始まりです。しかし、薩英戦争などの影響で120年の長きに渡って薩摩切子の製作は途絶えたといいます。復元されたのは、今から35年前。文献や江戸切子職人の協力を得て、薩摩切子を復活させました。現在、薩摩切子を製作している工房は県内に5軒あるそうです。その内の1軒が、ここ「美の匠 ガラス工房 弟子丸」。
赤や青、紫の切子の中でもひときわ目を引くのが黒切子。切子で黒は珍しいのでは?と尋ねたところ、黒酢や黒豚といった鹿児島の黒文化を受けて黒切子が誕生したのだとか。しかし、黒切子は割付(目安の線)が見えないため、非常に削るのが難しいそう。カットする順番に工夫を加えたり、手の感覚や音で削っていきます。どっしりとした落ち着きと、優美な黒の輝きに目が離せません。
こちらの工房には、グラスの他にステンドグラスなど切子の技法を使ったさまざまな作品があります。中でも注目したいのが「eco KIRI」と名付けられた独自の作品。薩摩切子の工程上、必ず出てしまうガラス廃材を切子師の技でアクセサリーに生まれ変わらせたもの。切子はお値段が張るというイメージですが、このeco KIRIなら安心のお値段。ペンダントやタックピン、ゴルフマーカーなどラインナップも充実しているので、家族や彼氏彼女にプレゼントしたら喜ばれそうです。
住所:鹿児島県霧島市国分清水1-19-27
電話:0995-73-6522
公式サイト:http://deshimaru.jp/
後編では霧島の美味がてんこ盛り!です。
協力:霧島市
取材・文/垣花幸子 取材・写真/関屋淳子