日本の各地から桜開花の便りが、続々届いている今日この頃。
桜前線は北へ、北へと順調に駆け上っているようです。東北、なかでも北東北の桜の見頃は、
例年4月中旬からゴールデンウィークにかけて。
思い立ったら吉日!北東北の桜の名所へ出かけましょう。
写真提供:岩手県観光協会
ここは、はずせない!「みちのく三大桜名所」
青森の弘前公園、秋田の角館、岩手の北上展勝地は総じて「みちのく三大桜名所」と呼ばれています。
三大とひとくくりになっていますが、それぞれ異なる魅力があるので、その見所をご紹介します。
青森県弘前市 弘前公園
弘前公園は、藩政時代に弘前藩を治めていた津軽氏の居城が置かれていた場所を公園として整備したもの。
およそ14万9000坪の広大な敷地内にソメイヨシノをはじめ、シダレザクラや八重桜など2600本あまりが
植えられています。この公園の桜の魅力は、そのボリューム感。枝いっぱいに花がみっしりと咲き、
お濠を縁取るさまは実に見事。満開のころはもちろん、桜の花びらが散り、お濠の水面に花筏が浮かぶ
風景もロマンチックです。
これほど密集して桜が咲くのは、弘前の名産であるリンゴの剪定技術を桜の管理に応用しているからと
いわれています。「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」という言葉がありますが、卓越した技術があるからこそ、
この美しい桜を見ることができるのです。
弘前城の天守といえば、お濠の石垣の上にそびえている様子が有名ですが、100年ぶりの石垣修理のため、
2014年に曳屋されて本丸のなかほどに移動しています。修理の完了には10年はかかるそう。
城が動くというのも貴重なもの。桜とともに、今しか見られない風景を楽しみましょう。
*「弘前さくらまつり」2019年4月20日〜5月6日
【こちらもおすすめ!】津軽鉄道で訪ねる芦野公園
弘前からJR線に揺られ五所川原へ。そこから津軽鉄道に乗り換えて訪れる芦野公園は、太宰治のゆかりの地であり、
「日本さくら名所100選」にも選ばれている桜の名所でもあります。
「列車で行くVol.23 青森・五所川原市金木町 小説を片手に太宰治のふるさとへ行こう!」でご紹介しているので、
そちらも併せてご覧ください!
秋田県仙北市 角館
弘前の城跡で楽しむ桜に対し、角館は武家屋敷の桜。江戸時代に芦名氏、佐竹北家の城下町として栄えた
角館には江戸時代末期の武家屋敷が数多く残り、なかでも内町と呼ばれる武家屋敷が立ち並ぶエリアは、
国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。しっとりとした風情が漂う内町。
桜の時季は、通りに続く黒板塀とシダレザクラの淡いピンクの対照美を楽しめます。およそ3000坪の敷地
を有する青柳家をはじめ、石黒家、岩橋家など表通りに面した武家屋敷は公開されているので、角館の上
・中級武士の暮らしぶりを感じつつ、桜を愛でる風雅な時が過ごせます。
*「角館桜まつり」2019年4月20日〜5月5日
↑武家屋敷「岩橋家」。江戸時代末期に改装され、茅ぶきから木羽ぶきに
かわったのだそう。訪れた時期は桜の見頃をやや過ぎていましたが、
それでも多くの人が訪れていました
岩手県北上市 北上展勝地
藩政時代の建造物と桜を愛でる弘前・角館とはまたひと味異なるのが、北上展勝地。
悠々と流れる北上川の河畔で、延々と桜の並木道が続きます。その長さおよそ2km。1920(大正9)年
に桜の植栽事業がはじまり、以来およそ1世紀の間、市民に支えられて全国に誇れる桜の名所へと成長し
ました。この一帯は展勝地公園と呼ばれ、園内にはソメイヨシノを中心に約150種類の桜、1万本が植えら
れています。さくらまつりが開催されている期間中は、北上川上にこいのぼりが飾られ、並木道の間を
観光馬車も運行します。
*「北上展勝地さくらまつり」2019年4月15日〜5月6日
↑桜並木の下をゆっくり進む観光馬車
【こちらもおすすめ!】盛岡市内の桜の名所
写真提供:岩手県観光協会
北上市からさらに北上し、盛岡でも桜を楽しみましょう。南部氏によって築かれた盛岡城の跡地を公園とした
盛岡城跡公園。石垣が城の名残を留める園内には、250本あまりの桜が植栽されています。
不来方(こずかた)の
お城の草に寝ころびて
空に吸はれし十五の心
これは、盛岡出身の歌人・石川啄木が旧制盛岡中学の学生だった頃を懐かしんで詠んだ有名な短歌です。
この「不来方のお城」が盛岡城跡のこと。啄木は26歳という若さで亡くなっていますから、「十五の心」はちょっと
前のこと。それでも大人になった「今」と比べ、青春時代の思い出はキラキラと輝いて見えたのではないでしょうか。
啄木に思いを馳せつつ愛でる桜も一興です。
*「盛岡さくらまつり」2019年4月13日〜30日
↑石垣の上から桜を望む。満開の桜で上からは見えませんが、桜の花の下にはお花見を楽しむ市民が!
盛岡の町歩きにについては、こちらでもご紹介しています。
レトロ建物をめぐり(前編)https://www.tabikoi.com/blog/2018/06/morioka/
(後編)https://www.tabikoi.com/blog/2018/08/moriokatown/
(取材・文 川崎 久子)