平成24年(2012)、5年に及ぶ保存・復原工事を終えて創建当初の姿となり、現在に至る東京駅丸の内駅舎。じつはただ通り過ぎてしまうにはもったいないほどの魅力に溢れているのです。うんちくを知り、ぜひ一度ゆっくり眺めてみてはいかがでしょう。
大正3年(1914)12月に開業した東京駅は日本の近代化を担う東京の中央駅としてその歴史を刻んできました。設計は日本を代表する建築家・辰野金吾。日本近代建築の父と呼ばれ、東京駅のほか日本銀行本店など、数々の西洋建築を手掛けています。
赤レンガを使った全長335mにも及ぶ堂々たるその姿は、当時の日本では斬新なデザインだったことでしょう。人の目を惹きつける赤レンガ駅舎は、耐震性を考慮し、松の杭を地中深くに打ち込み、その上に鉄骨を組みレンガで外壁を覆ったのです。そのため竣工8年後に起きた関東大震災でもびくともしませんでした。
しかし、1945年(昭和20年)、戦災により南北のドームなどが失われ3階建ての駅舎を2階建てとして復興し、長らくその姿のままだったのです。平成24年の保存・復原工事では、外観を創建時の姿に忠実に再現すると同時に、巨大地震にも耐えうるように、免震工法で施工しました。
魅力その1 ドームを見上げてみよう
南北ふたつのドームは辰野金吾のこだわりが満載です。天井部のレリーフはオリジナルのデザインが復原されています。八角形の角には鷲が取り付けられています。両翼を広げた約2.1mの鷲は躍動感にあふれています。さらに干支の彫刻も見えます。十二支のうち、八支。描かれているのは東西南北を表す卯・酉・午・子以外です。ではその4つの干支のレリーフはどこにあるかというと、辰野金吾の故郷である佐賀県武雄市の武雄温泉楼門にあるそうです。
ほかに、よく見ると剣や花飾り、鳳凰などもありその美しさは見飽きません。ただし人が行き交う駅舎内ですので、通行の邪魔にならないようお気を付けください。口をあんぐりと開けて見るには交通量が若干少ない南ドームのほうがおすすめです。
魅力その2 外観をじっくり堪能
駅外観を歩いて見て回りましょう。アールヌーボー様式の曲線を描いた意匠があり、細かいところまで装飾が素敵。また、皇室専用改札もあるのでチェック!
駅舎を利用した東京ステーションギャラリーも覗いてみましょう。様々な企画展が行なわれ、館内には創建当時のレンガを用いた展示室もあります。
さらに駅舎の地下と1階の一部、2階より上層を占めているのが東京ステーションホテル。創建当時の雰囲気そのままに改装されたノスタルジックな客室や駅構内を見下ろせる客室があります。宿泊者専用の朝食会場となるアトリウムは、丸の内駅舎の中央部最上階の屋根裏に当たる場所で、独特の空間。クラシックな佇まいと駅の中という特別感があります。
宿泊はちょっとという方は、ラウンジで寛いだり、バー「オーク」で、カクテル「東京駅」をいただいてみるのはいかがでしょう。甘党ならば、赤レンガの壁に囲まれた「TORAYA TOKYO」へ。老舗「虎屋」の直営店で、待ち合わせにも使える洒落たお店です。
魅力その3 夜景もいいんだよな~
丸の内駅舎を俯瞰して見るならば、新丸ビル7階のガーデンテラス、丸ビル5階のテラス、KITTE6階のKITTEガーデンがおすすめです。赤レンガと天然スレート葺きの美しさ、柱と柱頭さらにドーム部分の銅板や大時計など、計算された美しさがあります。
当然ながら夜景もまた素敵。ライトアップされた東京駅と丸の内中央広場、高層ビル群の景観は見飽きることがなく、刻々と移り変わる東京の夜をぜひ写真に収めてください。
また、夜は人出も減りますので、ぶらぶらと駅から皇居へ続く行幸通りを歩いてみるのもいいものです。お花見シーズンならば、夜桜見物の延長で。東京駅が刻んできた歴史を知れば、いつも見慣れた風景が違って見えるかもしれません。
取材・文/関屋淳子 写真/yOU(河崎夕子)