最近は何をするにもメールが便利。旅先からのメッセージもスマホで片手で送信! でOKな時代です。昔は旅に出ると、土産屋に立ち寄って旅先の景色が描かれた絵葉書を買い、ふるさと切手を貼って、友達へ旅の感動を伝えたものでした。ああ、私もデジタルに侵されているなぁ〜と反省しきりです。
そんな時代に切手ってどうなの? とお思いのそこのアナタ。ぜひ一度「切手の博物館」に足を運んでみませんか。多彩な図案や、切手に託された意味、そして無条件にカワイイ絵柄にきっと驚くはずですよ。
企画展「再結成! 切手のオーケストラ」展開催中!
JR目白駅から高田馬場方向へと歩くこと4分ほどの線路沿いに「切手の博物館」があります。
目印は入り口にあるまことちゃんポスト
開館は1996年で、日本および外国切手約35万枚(1960年以降に発行された切手のおよそ60%)、封筒やハガキなどのステーショナリー類約1万5000枚、切手関連の書籍やカタログ約1万3000冊、切手関連の雑誌・オークション誌約2000タイトルを所蔵する、世界でも珍しい郵便切手専門の博物館です。常設展示はなく、所蔵品の中から年4回3ヶ月ごとの企画展のテーマに合わせて、様々な切手を選んで展示しています。
1月5日から3月31日までは「再結成! 切手のオーケストラ」展が開催されています。「再結成」と謳っているのは、20年前に同様の企画展を行なっていて、そのリバイバル開催だからとのこと。ただ、この20年間に新たに手に入れたり発行されたりした切手も多くあり、前回に比べ内容は随分とパワーアップ。
切手は小さいので展示室はそれほど大きくありませんが、じっくりと見れば見るほど引きこまれます
展示室中央のパネルにはオーケストラの記念切手や世界各国の作曲家や指揮者、オーケストラで使われる楽器、民族楽器、さらにはロックバンド(映画で話題のあのバンドもありますよ)などの切手が展示されています。特に数の多いベートヴェンとモーツァルトの切手は幼少期からデスマスクまで色々なシーンが描かれています。
各パネルには虫眼鏡が備え付けられていますので、ぜひ拡大してみて。精細で緻密な印刷にきっと驚きますよ。
有名なオペラのシート切手なんていうのもあるんですね。ファンにはたまらないかも。
平安時代、琵琶の音色に愛を深める姿もありました。
壁面には大きな世界地図と日本地図が描かれています。世界地図には世界のコンサートホールと劇場を描いた切手の拡大コピーが貼られ、下の展示ケースには本物の切手が飾られています。実際に建っている国の場所に数字マークがあり、拡大切手コピーに相番号が振られているので、図柄を楽しみながら世界の地理の勉強にもなります。
建築様式に土地柄が出ていたりして、個性な建物めぐり気分が味わえます。
一方の日本地図には、日本のコンサートホールや劇場が使われている風景印が展示されています。風景印とは風景入通信日付印のことで、消印の一種。通常の消印情報の他に、その局の近くの名所旧跡や特産品、動植物、ゆるキャラなどが描かれていて、集めているファンも多いのだとか。コンサートホールや劇場をモチーフにしている14点の風景印を見ることができます。
直径36ミリの絵入りの消印である風景印。私も遺跡をテーマに集めてみようかと思っています(笑)
ハンズオン展示は、似ている楽器の名前当てクイズ。意外と混同しているものもあり悩んでしまいました。
切手に託された様々な意味に驚き!
展示室の最奥には、「切手のお勉強」コーナーがあり、切手の歴史や時代によって切手が担った役割などが解説されています。そもそも切手というと、裏糊をぺろっと舐めてハガキにペタっなんて使い方をするぐらいなので、どうしてもただの消耗品という目で見てしまうかもしれません。しかし、切手は浮世絵と同じ印刷物であり、一流の技術の結晶と言えます。なぜなら切手は「切手割符」の略称で、郵便料金を先払いしていることの証明書です。それゆえ偽装されないように、国家の威信をかけて最新かつ一流の印刷技術が用いられてきました。
絵柄には政府の思惑が顕著に表れることを知り、切手への興味が深まりました
さらには、政府が切手を通じて政策やイデオロギーを表現したり、戦時中には戦意を高揚させて自国の軍事力を内外にアピールする道具としても使われ、盛んに植民地を描いた切手が作られもしました。オリンピックや国際会議などの国家行事に際しては記念切手も発行されます。
切手の図柄に好みのものが描かれていれば「かわいいな」「欲しいな」という目を向けることはありましたが、国家の広告塔のような役目を担っていると知り、大いに目が変わりました。
切手をもっと楽しもう! お土産や体験もぜひ
スーベニアコーナーでは、かわいいポストカードや切手、切手を使ったグッズなどを販売しています。企画展や時期によってラインナップを入れ替えたり、売り切れになってしまったりするものもあるので、一期一会な確率は高め。「いいな♡」と思ったらぜひGETしておきましょう。
ちなみに、日本国内では日本の切手しか使うことはできません。たとえエアメールでも使えるのは日本の切手だけ。
楽器ピンズは、楽器をやっている人なら思わずつけたくなっちゃうかも。
猫好きのあの人に、ワイン好きの先輩に、甥っ子にはクジラがいいかな…なんてついつい買いすぎちゃいます。
なんと!切手のガチャがなんてあるんですね。しかも海洋堂です!
見過ごしがちだけど、ぜひ見てみて欲しいのが、受付カウンターの裏側にある、「ちょこっとはり絵」コーナー。ハガキに描かれたイルカかチューリップの下絵に合わせて、古切手を切り貼りするはり絵を体験できます。時間があればぜひ体験してみていただきたいのですが、コーナーの壁面に飾られた作品を見るだけでも十分楽しめます。
「ちょこっとはり絵」は火〜金曜日の10:30〜16:00、参加費は一人100円です。
早速やってみましたが、想像以上に難しい!そしてハマる!
壁面に飾られたはり絵は、毎年9月に行われる「切手はり絵コンテスト」の応募作品だそうで、どれも力作! 全部が切手でできているなんて驚きです。古い切手を切り取ってベルマークに送ったりした記憶はありますが、こんな楽しみ方があるとは! もっと早くに知りたかったです。
一番手前の猫ちゃんの目、オッドアイです!切手の様々な色合いが柄をうまく利用していますよね。
ベテランの方々ともなるとすごいクオリティです。ため息とともに、間近でじっくり眺めてしまいました。
切手のことをもっと知りたくなったら図書室へ。定期的なイベントも開催中!
2階は博物館の母体となる財団の創始者であり、世界的なコレクターでもあった水原明窓氏の書斎が再現されたスペースと、切手に関する書籍が約1万3000冊も揃う図書室のほか、世界で最初に発行されたイギリス切手の「ペニーブラック」と、日本で最初の切手「竜切手」が展示されています。いずれも細かな印影が見て取れ、職人の技術に敬服です。
閉架図書の利用は1日1,000円、貸し出しは行なっていません。
1871年、日本の郵便が創業したのと同時に48文、100文、200文、500文の4種が発行されました。
切手の魅力や面白さを伝える普及活動も盛んで、年に4、5回の特別展示が行われており、特にクリスマスの展示が毎年多くの方が訪れるそうです。また、毎月第3日曜に開催される「切手はり絵」ワークショップや夏休みのあいだ毎日開催する「きて☆みて☆きって(はり絵)」イベントは子供やファミリーに人気。夏休みの宿題にもぴったりですね。
切手の博物館(https://kitte-museum.jp/)
住所 :東京都豊島区目白1-4-23
電話 :03-5951-3331
開館時間:10:30〜17:00
休館日 :月曜日(祝日の場合も)、展示替時、年末年始
入館料 :大人200円、小中学生100円
*毎月23日の“ふみの日”は入館無料(23日が月曜日の場合は翌24日が無料)
交通 :JR山手線・目白駅徒歩3分、JR山手線、東京メトロ東西線、西武新宿線・高田馬場駅徒歩7分
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切手の魅力に気づいたら、なんだか手紙を書きたくなってきました。今年はなんでもメールで済まさずに、切手を使ってお便りを出してみようかなと思います。皆さんもぜひ、切手の博物館に足を運んでみてくださいね。
(取材・文/多田みのり)