前回に引き続き、スペイン・アンダルシア地方の世界遺産をご紹介します。今回はグラナダです。
イベリア半島におけるイスラム勢力最後の砦となったグラナダ。なかでも最も有名なのは「アルハンブラ宮殿」でしょう。1238年、ナスル朝のムハンマド1世がグラナダ王国を建国し、丘の上に築城を始めました。丘の土や城壁の色が赤く見えることから、アラビア語で「アルハムラー(赤いもの)」と呼ばれ、それがスペイン語の"アルハンブラ"と転訛したといわれています。創建以来増改築を進め、7代王ムハンマド5世の時代になって完成しましたが、時代はキリスト教徒によってイベリア半島を奪回する「レコンキスタ」真っ盛り。1492年、キリスト教徒による攻撃でアルハンブラ宮殿は陥落し、最後の王ボアブディルは北アフリカに逃れました。ここにレコンキスタが完了したのです。
その後、宮殿内のモスクは教会になるなどキリスト教へと受け継がれましたが、多くが破壊されることはなく、大理石の床やアラベスク文様、漆喰細工など華麗なイスラム芸術の結晶が今も残されています。一時代を華やかに彩ったグラナダ王国の栄枯に思いを馳せずにはいられません。
まずはアルハンブラ宮殿の中心となるナスル宮殿からご案内します。
入口を入ると最初にあるのが「メスアール宮」です。
ここを通って隣の「大使の間」へと要人が案内されました
対称形となる複数の板を組み合わせています
壁にも細かな漆喰細工やアラビア文字の
装飾書体が施され、美しい模様となっています
イスラム教では偶像崇拝が禁止されたため、
芸術分野ではアラベスク模様が発展しました。
ライオンの中庭は、列柱の回廊に囲まれています
ライオンの中庭の北側にある「二姉妹の間」では、
緻密な鍾乳石飾りの天井が見られます
リンダラハの中庭。庭園の上のバルコニーから
アルバイシン地区が一望できます
ナスル宮殿を出ると、パルタル庭園へと続きます。
全面に池が広がっています
9世紀ごろにイスラム教徒が築いた軍事要塞
次はカルロス5世宮殿です。
レコンキスタ後の1526年、カルロス5世が新婚旅行でアルハンブラ宮殿に滞在した時に建設を決めたものですが、資金不足から完成しませんでした。
ルネッサンス様式で建てられた宮殿。
現在はミュージアムとして活用されています
癒される空間が広がっていました
最後はアルバイシンです。
11世紀ごろ、イスラム教徒が築いた町
アルハンブラ宮殿内は自由に散策できる場所と、入場券が必要な場所があります。
主要な観光スポットである「ナスル宮殿」「アルカサバ」「ヘネラリーフェ」は入場券が必要となりますので、ご注意ください。
ツアーに参加するか、あるいは入場券を事前に予約するのが確実です。
■スペイン・1984年登録/1994年範囲拡大・文化遺産
■グラナダのアルハンブラ、ヘネラリーフェ、アルバイシン地区
(Alhambra, Generalife and Albayzin, Granada)
(文・山本 厚子)