マイスターと世界遺産の知の旅へ by 山本厚子

世界遺産への旅Vol.19 グラナダのアルハンブラ、ヘネラリーフェ、アルバイシン(スペイン)

前回に引き続き、スペイン・アンダルシア地方の世界遺産をご紹介します。今回はグラナダです。

20170730granadaDSC03337.JPGナスル宮殿の中のライオン宮にある「ライオンの中庭」

イベリア半島におけるイスラム勢力最後の砦となったグラナダ。なかでも最も有名なのは「アルハンブラ宮殿」でしょう。1238年、ナスル朝のムハンマド1世がグラナダ王国を建国し、丘の上に築城を始めました。丘の土や城壁の色が赤く見えることから、アラビア語で「アルハムラー(赤いもの)」と呼ばれ、それがスペイン語の"アルハンブラ"と転訛したといわれています。創建以来増改築を進め、7代王ムハンマド5世の時代になって完成しましたが、時代はキリスト教徒によってイベリア半島を奪回する「レコンキスタ」真っ盛り。1492年、キリスト教徒による攻撃でアルハンブラ宮殿は陥落し、最後の王ボアブディルは北アフリカに逃れました。ここにレコンキスタが完了したのです。
その後、宮殿内のモスクは教会になるなどキリスト教へと受け継がれましたが、多くが破壊されることはなく、大理石の床やアラベスク文様、漆喰細工など華麗なイスラム芸術の結晶が今も残されています。一時代を華やかに彩ったグラナダ王国の栄枯に思いを馳せずにはいられません。

まずはアルハンブラ宮殿の中心となるナスル宮殿からご案内します。
入口を入ると最初にあるのが「メスアール宮」です。

20170730granadaDSC03245.JPGメスアールの中庭。中央には白い大理石の噴水(複製)が置かれています

メスアール宮の次にあるのが、「コマレス宮」です。

20170730granadaDSC03257.JPG

コマレス宮の「アラヤネスの中庭」。コマレス宮は政治の中心となった場所で、
ここを通って隣の「大使の間」へと要人が案内されました
20170730granadaDSC03269.JPG広間の天井。木工技術の粋を集めて造られたもので、
対称形となる複数の板を組み合わせています

20170730granadaDSC03271.JPG壁にも細かな漆喰細工やアラビア文字の
装飾書体が施され、美しい模様となっています

20170730granadaDSC03275.JPGイスラム教では偶像崇拝が禁止されたため、
芸術分野ではアラベスク模様が発展しました。

壁の美しいタイル装飾もその一例

コマレス宮の奥に位置するのが、スルタン(王)のプライベートな空間であった「ライオン宮」。

20170730granadaDSC03302.JPGライオンの中庭は、列柱の回廊に囲まれています

20170730granadaDSC03320.JPGライオンの中庭の北側にある「二姉妹の間」では、
緻密な鍾乳石飾りの天井が見られます

20170730granadaDSC03361.JPGリンダラハの中庭。庭園の上のバルコニーから
アルバイシン地区が一望できます

ナスル宮殿を出ると、パルタル庭園へと続きます。

20170730granadaDSC03383.JPGパルタル庭園に建つ「貴婦人の塔」。

全面に池が広がっています

広々としたアルハンブラ宮殿の敷地でナスル宮殿と並んで、入場券が必要なエリアが「アルカサバ」です。

20170730granadaDSC03156.JPGアルカサバはアルハンブラにおいて最も古く、
9世紀ごろにイスラム教徒が築いた軍事要塞

20170730granadaDSC03166.JPG要塞だけあって、見晴らしがとても良いです

次はカルロス5世宮殿です。
レコンキスタ後の1526年、カルロス5世が新婚旅行でアルハンブラ宮殿に滞在した時に建設を決めたものですが、資金不足から完成しませんでした。

20170730granadaDSC03398.JPGルネッサンス様式で建てられた宮殿。
現在はミュージアムとして活用されています

世界遺産への登録名は「グラナダのアルハンブラ、ヘネラリーフェ、アルバイシン」となっている通り、アルハンブラ宮殿のほか、チノス坂を挟んで宮殿に隣接するナスル朝の夏の離宮「ヘネラリーフェ」と、ダーロ川を挟んだ対岸の丘にあるグラナダ最古の町並みが残る「アルバイシン」も世界遺産に登録されています。

20170730granadaDSC03446.JPG

ヘネラリーフェには、水路や噴水が設けられ、涼やか

20170730granadaDSC03466.JPG私が訪れた5月は色とりどりの花が咲き乱れ、
癒される空間が広がっていました

最後はアルバイシンです。

20170730granadaDSC03197.JPGこれはアルカサバからの眺めたアルバイシン。
11世紀ごろ、イスラム教徒が築いた町

アルハンブラ宮殿内は自由に散策できる場所と、入場券が必要な場所があります。
主要な観光スポットである「ナスル宮殿」「アルカサバ」「ヘネラリーフェ」は入場券が必要となりますので、ご注意ください。
ツアーに参加するか、あるいは入場券を事前に予約するのが確実です。

■スペイン・1984年登録/1994年範囲拡大・文化遺産
■グラナダのアルハンブラ、ヘネラリーフェ、アルバイシン地区
(Alhambra, Generalife and Albayzin, Granada)

(文・山本 厚子)

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