思わず心が躍ってしまうクリスマスシーズンがやってきました。空気は冷たくても、見る人の心をほっこりさせてくれるあたたかなライトアップを箱根へ見に行ってみませんか?
彫刻の森美術館にて、光のアーティストである高橋匡太氏とつくる参加型ライトアップイベント「箱根ナイトミュージアム」が開催中です(~2019年1月6日)。開催日前日に行われたプレス内覧会に参加してきました。
高橋匡太 《Glow with Night Garden Project in Hakone》 2018年 ジュリアーノ・ヴァンジ《偉大なる物語》
「箱根ナイトミュージアム」は、無料で貸し出してくれるLEDの提灯片手に、彫刻の森美術館のライトアップされた夜の屋外展示場や屋外彫刻作品を巡るというイベントです。
七色の提灯が闇の中に光ります
夜の彫刻庭園を歩きながら出会う彫刻作品や風景に呼応して参加者ひとりひとりの提灯が七色(なないろ)のグラデーションへと色が変わり、参加者の動きによって提灯のゆらぎが園内全体に散りばめられ、さまざまな色の光の夜景を作り上げていきます。まるでその様子は光で描いたドローイング。自分自身がアート作品の一部となったかのような不思議な感覚になれます。
LEDの光を使った提灯なのでお子さんも持てますよ
箱根ナイトミュージアムの開催は昨年に続いて今回で2回目。今年はパワーアップ、バージョンアップして再登場となりました。ライトアップされた彫刻作品は昨年の19→38へと倍増。展示室屋上からの照明が今年は追加され、作品そのものをライトアップすることで、闇の中で彫刻をより一層美しく浮かび上がる様子を見られるようになりました。これは特に、明るい時間に事前にその作品を見ておくことで違いがわかるはずです。闇の中で作品に照明が当たると、人物像の作品であれば、肩甲骨や筋肉の盛り上がりや力強さ、身体のくびれ、人の肌のなめらかさ、顔の表情の陰影が際立って見えるのです。白や赤、青や紫など色が変わる様子を見つめていると、その人物が怒って見えたり、悲しんで見えたり、放心しているように見えたりと、光によって作品が持つ空気感が異なって見えるのです。
高橋匡太 《Glow with Night Garden Project in Hakone》 2018年 フランシスコ・ズニガ《海辺の人々》 日中とナイトミュージアムでは照明の当たり具合で同じ作品も異なって見えます
彫刻作品が作る影が地面や壁に映る様子や、次々と変化する色のコントラストもとても美しく、そして真っ白な大理石作品に光が当たることによって、石があたたかくやわらかく見えたりと、鑑賞しているこちらの感情も強く揺さぶられます。
高橋匡太 《Glow with Night Garden Project in Hakone》2018年 岡本太郎《樹人》 壁に映る影を見ると、、、、作品名通り、影が人間に見えるのです
そして今回は、作品や提灯をランケーブルでつなげたことで、見渡せるすべての照明が連動し、奥から手前に光が流れたり、全体の色を一色に染めたり、逆にバラバラにしたりとダイナミックな演出を繰り広げることが可能となりました。様々な色へと変わる提灯が園内を歩く人たちによって全体に散らばり、幻想的な光景を見せてくれます。自分が持つ提灯、隣りの人の提灯、遠くを歩く人の提灯と、園内全体がアート作品のような美しさとなります。
園内に点在する作品たちがさまざまな色に照らされて幻想的な光景を見せてくれます
今回のイベントの演出家である高橋匡太氏は、愛知トリエンナーレや東京駅前の東京ミチテラス、越後妻有の大地の芸術祭など全国でさまざまな光のアートプロジェクトを手がけるアーティスト。高橋さんは、「人のあたたかな暮らしが街の夜景を作るように、明かりが灯る場所に人が居るという参加型に力を入れています」と話します。「照明によって劇空間、舞台セットを作り出し、来館者にもその一員になって欲しいと思っています」と高橋さん。ちなみに高橋さんによるアーティストトークが2019年1月5日(土)に開催予定です(詳細は公式HPにて)。
オーギュスト・ロダン《バルザック》の前の高橋匡太氏
また、美術館エントランスにある《ひかりの実》もお見逃しなく! 《ひかりの実》は、2011年に岩手県の陸前高田市と横浜との交換プロジェクトとして始められたもの。インフラが整わない中、コストを極力かけないよう、電池式のライトを袋に入れてイルミネーションを灯したそうです。
エントランスにある、笑顔がいっぱいの《ひかりの実》
箱根ナイトミュージアムの《ひかりの実》も、10月のプレイベントにて373名の世界各国老若男女問わずの来館者に、果実袋に高橋さんが描いた丸の中に自由に笑顔を描いてもらいました。そして絵が描かれた果実袋の中にLEDの小さなライトを入れ、平和や知恵の象徴ともいわれるオリーブの木に飾り、ひとつひとつ表情の違う“笑顔の成る木”となって輝いています。ナイトミュージアムを見終わって出口に出ると、真っ暗な夜に浮かびあがる光のツリー。帰る瞬間まであたたかな気持ちになれるはずですよ。
「箱根ナイトミュージアム」はもちろんお子さんも歓迎! 大勢の来館者がいればいるほど、光があふれて美しい光景を見せてくれるはずです。明るい日中は、「幸せをよぶシンフォニー彫刻」や「ネットの森」「ピカソ・コレクション」のほか、レストランやカフェ、温泉足湯などのナイトミュージアムの時間帯はクローズする施設を楽しみ、夕刻から徐々に暗くなっていくマジックアワー、そして真っ暗になる夜にかけてはナイトミュージアムを巡り、彫刻の森美術館を半日ほどかけてゆっくり楽しんでくださいね。
上:ニキ・ド・サン・ファール《ミス・ブラックパワー》取材日(11月30日)は紅葉が見事でした! 左下:ガブリエル・ロアール《幸せをよぶシンフォニー彫刻》。螺旋階段を上がると展望台になっています 右下:カフェでは屋外の彫刻を見ながらティータイムを。ブリオッシュに好きなジェラートを挟んでいただく「ジェラート・コン・パーネ」。カフェの隣りに温泉の足湯もあります。これらはナイトミュージアムの時間帯はクローズするので、日中に訪れましょう!
彫刻の森美術館(無休/年末年始も開館)
箱根ナイトミュージアム(開催中~2019年1月6日)
http://www.hakone-oam.or.jp/specials/2018/nightmuseum/
取材・文:塩見有紀子