カリブ海に浮かぶ島国・キューバにある9つの世界遺産のうち、以前「ハバナの旧市街と要塞群」をご紹介しました。
今回ご紹介するのは、首都ハバナから南東へ約280kmに位置するトリニダードです。
市立歴史博物館から眺めるマヨール広場
キューバはコロンブスの"発見"以降、スペインの植民地として世界史の表舞台に登場します。この時、スペイン人によって持ち込まれたのがサトウキビです。農園が開かれ、のちにアフリカより連れてこられた黒人奴隷を使った大規模なプランテーションが営まれ、砂糖貿易は一大産業へと発展しました。
巨万の富を得た農園主たちは、トリニダードに大豪邸を建てました。今も町の中心となるマヨール広場を取り囲むように、18〜19世紀に建てられたバロック様式の豪華な館が並んでいます。
マヨール広場の周辺には、街のシンボルとなるサンティシマ教会をはじめ、1750年の建物を活かした「建築博物館」や、1808年に建てられた農園主の屋敷を利用した「ロマンティコ博物館」などが見られます。
マヨール広場でひときわ目立つサンティシマ教会
トリニダーのコロニアル建築について紹介する建築博物館
建築博物館内で鍵を展示する一角
カルテロ邸を使った市立歴史博物館
市立歴史博物館内には華やかな調度品が展示され、
当時の農園主の生活を垣間見ることができる
そして、これらの古い町並みのトリニダードと合わせて世界遺産に登録されているのが、ロス・インヘニオス渓谷です。私は時間の都合で訪れることができませんでしたが、トリニダード郊外にあるサトウキビ農園があった場所です。奴隷を見張るための高さ44mの「イスナーガの塔」も建てられ、今も残っているそうです。
トリニダードを散策していると、今も当時の面影を残す豪華な邸宅や農園主たちの華やかな暮らしぶりに目を奪われてしまいますが、それを支えていたのは、黒人奴隷たちが強いられた過酷な労働だったと思うと複雑な気持ちになりますね。
世界遺産を旅していると、本当に歴史や文化などたくさんことが学べるなあとあらためて感じました。
■キューバ・1988年登録・文化遺産
■トリニダードとロス・インヘニオス渓谷
(Trinidad and the Valley de los Ingenios)
(文・山本 厚子)