イタリア・トスカーナ地方にあるフィレンツェは、14世紀末から17世紀にルネサンスが花開いた商業都市。「花の都」と称えられ、サンタ・マリア・デル・フィオーレ聖堂(ドゥオーモ)やウフィツィ美術館など、今も当時の華やかな面影を感じられます。
12世紀、自治都市を宣言し、毛織物業や金融業で栄えたフィレンツェ。その中から台頭してきたメディチ家が市制を掌握し、約300年にわたってフィレンツェを支配しました。15世紀半ばには、コジモ・デ・メディチがルネサンスの芸術家たちを庇護し、ルネサンス文化が花開いたのです。コジモの孫のロレンツォ・デ・メディチもボッティチェリやミケランジェロなど才能ある芸術家を保護し、ルネサンス最盛期を迎えました。
街のシンボルともいえるサンタ・マリア・デル・フィオーレ聖堂(ドゥオーモ)は、白や緑、ピンクなどの大理石で飾られたゴシック様式の壮大な建築物。約3万人が一堂に会することができるそう。建築家ブルネッレスキが設計した高さ約100m、直径約42mの巨大なクーポラ(イタリア語で教会の丸屋根のこと)が特徴で、青空によく映えます。その内側には、画家で建築家のヴァザーリやその弟子たちが描いたフレスコ画『最後の審判』も見られます。
シニョリーア広場を見下ろして建つのは、ヴェッキオ宮です。フィレンツェ共和国の政庁舎を改装し、メディチ家の邸宅としても一時使われていました。塔の高さは94mあり、建物の前には、ミケランジェロの『ダヴィデ像』が建てられています(現在はレプリカ)。
現在は、メディチ家の美術コレクションを収蔵する美術館として公開されており、ボッティチェリの『春』『ヴィーナスの誕生』、ダ・ヴィンチの『受胎告知』など、一度はどこかで見たことがある有名なルネサンス絵画が数多く展示されています。
ウフィツィ美術館は、ヴァザーリの回廊によってアルノ川を挟んで対岸にあるメディチ家の邸宅・ピッティ宮とつながっています。メディチ家の人々は、市民の目にふれることなく、移動していたのですね。
まだまだ見どころの多いフィレンツェ。
イタリア・ルネサンスの芸術家たちの足跡を訪ねて、旅してみてはいかがでしょうか。
■イタリア・1982年登録・文化遺産
■フィレンツェ歴史地区
(Historic Centre of Florence)
(取材・執筆 山本 厚子)