橋が好き。
美しい川と木々と空...圧倒的有機物の中に、人工物でありながらそこに役目を持って佇む姿は凛として「かっこいい!」とさえ思います。昔「マディソン郡の橋」という映画になった恋愛小説があったのですが、この主役の男性が「ナショナル・ジオグラフィック」という雑誌の写真家で、マディソン郡に橋を撮りにきたというところから物語が始まりました。このベストセラー小説を読んだ時、私も橋を求めて撮り続けるのも悪くないなあと思った記憶が。
それぞれの橋の色やフォルム、素材...その魅力は橋単体ではなくて、その場所と機能美が融合する美しさというのでしょうか。写真を撮る人間には、そこに橋があってこその風景に写欲が湧くのです。今回はそんな「橋のある風景」をいくつかご紹介します。
江戸川を渡る「矢切の渡し」からの眺め
映画「男はつらいよ」で知られる葛飾柴又から、江戸川の対岸にある矢切(千葉県松戸市)へは江戸時代の規制で橋が造れなかったことから、木製の渡し船で往来する「矢切の渡し」が生活の足でした。現在は道路や橋も整備されていますが、風情たっぷりな渡し船は今も健在。ゆっくり揺られて遠くを見れば、北総線の鉄道橋が広い空に映えます。
神奈川県鎌倉市の東勝寺橋
こちらは鎌倉の材木座と由比ヶ浜の間を流れる滑川にかかる東勝寺橋。大正時代に造られた橋梁は、アーチが美しい鉄筋コンクリートの橋です。鎌倉にかかる橋の中でも一般使用される最古の橋で、景観重要建築物に指定されています。
美しい緑の季節、紅葉の季節....四季折々全く異なる表情を見ることができます。
ここは何度も訪れているお気に入りの場所。
新潟県津南町の前倉橋
津南町といえば毎年秋には全国から観光客が集まる人気紅葉スポット。
なかでも人気なのが中津川にかかる前倉橋。その赤い欄干が風景を造り、新潟の橋50選にも選定されています。絶壁の岩と岩にかかる赤いアーチ型の鉄橋がある風景は、新緑の時期にも是非訪れたいと思っています。この時はまさに紅葉シーズン。霧がかかっていて幻想的でした。
香肌峡には70もの橋がかかる
かつて仕事で三重県松阪市の地域おこしの企画に関わったことがありました。
元々飯高町、飯南町という山側の町は18年ほど前に松阪市に合併されました。「香肌峡」と呼ばれるこのエリアは、碧く輝く櫛田川の水と白い岩肌と木々の緑に包まれています。その絶景のあちらこちらにおよそ70もの橋。黄色、緑、青、赤....色とりどりの橋が、その自然の中に実に美しく映えるのです。
香肌峡の沈下橋
そして香肌峡でも珍しいのがこの沈下橋。
洪水などが多い地域で、橋の倒壊を避けるために欄干がなく、増水した際には橋が水面の下になるような構造になっています。
決して派手ではないですが、風景を美しく創るその機能美にうっとりします。
元々沈下橋は高知県に多いとか。こちらは土佐町
いかがでしたか?これまで撮影したきた中からいくつかご紹介しました。
この秋、美しい橋が創る風景を求めて旅をしてはいかがでしょう。