前編に引き続き、北海道大学構内を歩きましょう。キャンパスを北に向かい、重要文化財の札幌農学校第2農場を目指します。北海道大学の前身である札幌農学校が明治9年(1876)に開校。北海道の風土に合った近代的な酪農業を進めるための施設や農機具が備わる拠点づくりが行なわれました。札幌農学校第2農場はおもに乳牛を飼養する1戸の酪農家をイメージした模範農場として開設、1877年~1912年建築の9棟の建造物が集まります。
まず、事務所で記帳をし見学開始。場内のおもな建物はアメリカ中西部の開拓地に広まった軽木骨造りで、バルーン・フレーム(風船構造)といわれる、薄い板を張り上げていく建築様式です。西部劇に出てくる木造のシンプルな2階建ての建物のイメージですね。
左の建物が事務所
まず注目したい2棟があります。ひとつは1877年完成の模範家畜房(モデルバーン)。1階が家畜舎、2階が干し草の収納庫となっています。同年建築の穀物庫(コーンバーン)はトウモロコシの貯蔵庫で、乾燥とねずみ除け目的の高床式です。両施設ともわが国最古の洋式農業建築として貴重なものです。
模範家畜房
左の建物が穀物庫、渡り廊下でつながるのは収穫室及び脱ぷ室
さらに1910年建築の釜場はジャガイモなどを煮込んで家畜のえさを作る施設で、札幌軟石による石造り建築。囲炉裏を置いた従業員の待機・休憩所でもありました。煉瓦の建物は製乳所で、牛乳の製造と乳製品の加工・保存を行なう施設でした。
左が釜場、右が製乳所
ひときわ大きな建物が牧牛舎で、20世紀初頭に欧米で開発された新形式の乳牛用の牛舎です。1909年の建築。裏に回ると煉瓦造りの根菜貯蔵室と1912年建築のサイロ(緑飼貯蔵室)があり、石造円筒形サイロとしては現存最古となります。
場内を見て回るだけで乳牛を飼育し、牛乳や乳製品を作り上げるまでの施設が手に取るようにわかり、牛や馬がいなくても牧歌的な雰囲気に浸れます。5月8日~11月4日は模範家畜房などの屋内も公開され、開発初期の農機具の展示もあります。北海道の近代農法がここから始まり、日本の畜産の歴史が歩み出した場所。もう一度北大マルシェに立ち寄って、心して美味しいソフトクリームを食べたいと思いました。