大阪のレトロ散歩。前編は大阪商人の心意気ともいえる名建築をご紹介しました。後半は大阪・中之島のシンボルともいえる文化の殿堂をご紹介します。
建築美が映える 大阪府立中之島図書館
明治37年(1904)に完成した美しい図書館は、大阪を基盤とする住友家による社会貢献の一環で、15代当主・友純の寄付によって建てられました。外観はギリシャ・ローマの神殿建築の様式を踏襲し、シンメトリーの風格ある佇まいです。大型のペディメント(三角破風)があり、4本の円柱にはアカンサスの葉をモチーフにした飾りがついています。
なかに足を踏み入れると、正面中央ホールでは半球形のドームを見ることができます。これが実に優美。空間の中央にはやはり左右対称の曲線の階段が配されています。天井のステンドグラスの円形窓からは光が降り注ぎ、清々しい気持ちになります。正面には2枚の銅板が掲げられ、友純が寄付に至った経緯が書かれているそうです。そして、その左右には野生を表現する野神像と知性を表わす文神像が立ちます。長崎平和祈念像で知られる彫刻家・北村西望の手によるものです。
もちろん現在も図書館として機能しており、カフェも備えています。
相場師が私財を投じた 大阪市中央公会堂
中之島で威風堂々のファザードを見せるのが大阪市中央公会堂です。株の仲買人であった岩本栄之助が、今でいえば数十億という巨額を寄付、大正7年(1918)に竣工しました。岩本は渋沢栄一らと渡米し、富豪が慈善事業や公共事業に財を投じていることに感銘、ホール建設を決めたといいます。岩本は日露戦争終結による空前の株価の急騰の際に、多くの仲買人を救ったり、証券取引所で働く若者のために塾を作るなど、絶大な信頼を受け、北浜の風雲児と称されました。しかし、夢見た公会堂完成の2年前、第一次世界大戦勃発の影響で莫大な損失を出し、岩本は自死。享年39でした。
公会堂内部は荘厳な雰囲気の大集会室や貴賓室として使われていた特別室などがあり、岩本の思い通り、海外歌劇団によるオペラやヘレン・ケラーの講演会などが行なわれ、重要文化財となった現在も様々な催しが行われています。正面のアーチ屋根の上には、科学・工芸・平和を象徴する女神ミネルヴァと商業の神メルキュールが鎮座、大阪・北浜を見守っています。