琴...というと思い浮かべるのは、やっぱりお正月。テレビからも街中でも耳にする「春の海」を聞くと新年を感じるものです。ところが、琴はもともと「春の海」で奏でられる西洋音楽のようなメロディやフレーズはなかったそう。
今回は琴の演奏を通じて、新しい時代にコミットするイノベイティブな活動を行っている琴奏者の明日佳さんにフォーカス。彼女は琴演奏家で作曲家の父親、同じく琴の演奏家の母親の元に生まれ、自ずと琴を触っている環境で育ちました。幼少期から自宅には一日中琴の音が鳴っていましたが、それが心地よくて大好きだったとか。
初めて人前で演奏した記憶は3歳。その後も父親が開催する演奏会に毎年出演、舞台キャリアは数えられぬほど。小中学生時代も琴以外に興味がなく、部活にも所属せずに授業が終われば直帰。そのまま琴の世界に生きるべく、芸大付属の高校へ、その後芸大の邦楽部へ進学しました。
そんな折に転機到来、偶然に出会ったのがジャズ。琴の世界で純粋培養された彼女は、そのセッションのグルーヴ感に衝撃を受けて、「この音楽に琴が入り込めないだろうか?」と考えるようになりました。
琴には古い歴史があり、多くの作曲家が存在しました。そして時代によって、楽曲や演奏スタイルも変化を遂げてきたそうです。例えば琴の名曲「春の海」(明治時代)。この楽曲を生んだ宮城道雄氏は、明治以前にはなかったリズム・メロディ・ハーモニーといった西洋音楽の概念を積極的に取り入れた作曲家でした。現代においてこの「春の海」は最も有名な琴の楽曲ですが、それが比較的新しいものだと知って驚きました。
新しいスタイルでの活動が注目されている
そしてジャズに出会った明日佳さんも、琴の世界に感じていた固定概念を破るべく、新しい活動をスタートさせます。
アーティストのMonday満ちるさんと出会って、NYでの活動も開始、ついにジャズやダンスミュージックに琴を取り入れたセッションを実現させました。現代、琴でポップスをカバーすることは国内でも増えてきていますが、明日佳さんはポップスのカバーではなく、和楽器である琴の穏やかな音色の美しさを最大限表現できる音楽を作っていきたいと、自ら作曲も手がけるように。
彼女にとっての「ニホンノカタチ=琴」の魅力は「雅さ」と「癒し感」、そして「ちょっとした怖さ」 邦楽の持つ神秘性に通ずる「怖さ」は最大の魅力だと言います。
そして次世代への継承者としての目標は、「お正月だけでなく1年を通じて琴が聞こえる状況を作りたい」
そんな明日佳さんの活躍は日本に止まらず、世界中に拡がっていくことでしょう。
後編では彼女に教えていただいた琴そのものの魅力について、ご紹介します!