今年も世界遺産委員会の季節がやってきました。
6月24日〜7月6日にかけて、ロシアのサンクトペテルブルクで第36回世界遺産委員会が
開催されます。
昨年はバーレーンで開催される予定だったものの、アラブ諸国の政情不安の影響を受け、
パリのユネスコ本部で開催されました。
昨年は自然遺産の「小笠原諸島」、文化遺産の「平泉」と日本から 2つの 世界遺産が
誕生しました。
今年は日本からの推薦物件がないので、あまりメディアでは取り上げられないかもしれま
せんね。
今年1月に暫定リストの中から「富士山」(山梨県・静岡県)と「武家の古都・鎌倉」(神奈
川県鎌倉市ほか)の推薦書がユネスコに提出されています。
これらは来年、審議されることになります。
倉の地に武士による幕府が初めて開かれ、武家文化が育まれました。
◆どのようにして世界遺産に登録されるの?
ここでは世界遺産登録までの流れを説明しますね。
■世界遺産条約の締結
遺産を保有する国は、まず世界遺産条約(「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」)を締結しなければなりません。この条約は、1972年にユネスコ総会で採択され、1975年に20カ国が締結し、正式発効されました。日本が締結したのは1992年で、125番目の締結でした。
■暫定リストの提出
世界遺産条約締結国の政府が国内の暫定リストを作成し、ユネスコ世界遺産センターに提出されます。そして、暫定リストに記載された物件の中から条件が整った物件をユネスコ世界遺産センターに推薦します
(「富士山」と「武家の古都・鎌倉」は、現在この段階ですね)
遺産の保護・保全の責任は遺産保有国が担うため、原則、推薦は自国で行わないといけません。また、遺産は国内の法律などによって保護されていなければなりません。
■世界遺産センターで受理し、調査へ
ユネスコの世界遺産センターで推薦書を受理すると、自然遺産はIUCN(国際自然保護連合)、文化遺産はICOMOS(国際記念物遺跡会議)とそれぞれ専門機関に調査を依頼します。物件の価値や保護・保全状態、今後の保全計画などの現地調査が綿密に行われ、世界遺産センターに評価報告書が提出されます。「登録」「情報照会」「登録延期」「不登録」の4段階の評価でユネスコに勧告します。
(「富士山」と「武家の古都・鎌倉」の現地調査は今年の夏から秋にかけて行われる予定です)
■世界遺産委員会での審議
IUCN、 ICOMOSの報告に基づき、毎年1回開催される世界遺産リストへの掲載物件の可否が決定されます。
世界遺産センターに登録推薦書を提出してから、登録決定まで最短でも1年半の期間が必要となります。実際には、法整備や長期的な保全計画、地元の人の同意など、さまざまな準備が必要で、もっと長い年月を要すことになります。
◆今年の委員会での注目ポイントは?
第36回世界遺産委員会では、36件(内1件は登録範囲の拡大)の推薦物件が審議される予定です。新たに何件の世界遺産が誕生するでしょうか?
ちなみに現在は、文化遺産725件、自然遺産183件、複合遺産28件、計936件の世界遺産があります。
注目は、2011年10月にユネスコに加盟し、12月に世界遺産条約を批准したばかりのパレスチナです。「Birthplace of Jesus:
Church of the Nativity and the Pilgrimage Route,
Bethlehem(キリスト生誕の地:ベツレヘムの聖誕教会と巡礼の道)」が推薦されていますが、どうなるでしょうか。
ローマ皇帝コンスタンテイヌスの母・ へレナがイエスの生誕の地をこの地下洞窟だと定め、
皇帝によって325年に「生誕教会」が建てられました。星型のプ レートの場所がキリストが 生
まれたところと伝えられています。上部には各宗派から奉納されたランプが掲げられています。
パレスチナの他にも、中東のカタール、アフリカのチャドとコンゴ共和国、オセアニアのパラオに、その国初めての世界遺産が誕生するか期待されています。
皆さんも世界遺産委員会のニュースに注目してみてくださいね。
(執筆 山本 厚子)