台湾に“ロマンチック街道”があるのを知っていますか? 今、国内外の旅行者から人気上昇中なのがこのルート。北は台北から最南県の屏東(ピンドン)まで山間を縫うように走り抜け、沿線にはのどかな風情の見どころが集まっています。なかでも興味深いのは、客家(はっか)人の里。独特の茶文化や染め物など先祖伝来の風習が息づき、レトロな町並みは趣たっぷりです。また、周辺には花の名所や温泉といった癒しスポットも点在しています。今回は、このルートを3編に分けて紹介! Vol.1に続き、Vol.2では、新旧の文化が交錯する町「南庄(ナンヂュアン)」をクローズアップします。
多様な民族が暮らす町「南庄」
台湾北西部に位置する苗栗(ミアオリー)県は周囲を美しい山々に囲まれ、「山城」とも称される場所。なかでも県東北部にある南庄は、約200年前、客家人らによって開拓されたところで、今も住民の大半を客家人が占めています。少数ながら原住民のサイシャット族やタイヤル族、ホーロー人、さらに近年になって東南アジア各国から移住してきた「新住民」も住んでいます。さまざまな民族が醸す独特の風情は、この町の魅力。ちょっとディープな台湾を垣間見られることでしょう。
南庄が飛躍的に発展したのは、林業や炭坑業で栄えた日本統治時代(1895~1945 年)。当時は数多くの劇場や飲食店もでき、山中とは思えないほどのにぎわいだったそう。ところが一転、1935年の大地震により町は壊滅状態に。その後、台湾総督府の再生計画のもと、建物は長崎式の木造二階建ての和風建築に統一され、これが現在の町並みの原型になったといわれています。
老街巡りが楽しいノスタルジックタウン
今も、往時の趣が残る南庄の町。数々の歴史スポットも点在する老街(ラオジエ)では、古き良き時代の雰囲気をたっぷり満喫できます。特に、町の中心にある「桂花巷(グイフアシアン)」という小道は情緒満点。人がすれ違うのがやっとの細い路地の両脇に昔懐かしいお菓子やみやげ物を扱う店が集まり、まるで縁日のような楽しさです。通りの名にちなみ、桂花(=キンモクセイ)を使ったソースやスイーツが名物になっているので、訪れた際は要チェックですよ!
桂花巷と並行して走る中正路や中山路周辺には、客家料理店をはじめ、山の幸をふんだんに味わえるサイシャット(賽夏)料理のレストランが点在しています。客家の伝統菓子の店も数多く、なかには地元住民御用達の日用雑貨や年代物のグッズを扱う店も。価値の査定はさておき、思わずクスッっと笑ってしまうような品も見つかり、ローカル色満点です。よ~く目を凝らして探せば、お宝を発掘できるかもしれませんよ!?
<南庄のご当地グルメ2選>
散策で欠かせないのが、その土地ならではの名物グルメ。レトロな町の雰囲気にもピッタリの2軒を紹介しましょう。
~喜麦福養生工房 シーマイフーヤンションゴンファン~
地元の恵みを生かした自然派饅頭
老街散策中の食べ歩きにおすすめなのが、ここの蒸したて饅頭です。サツマイモや紫イモなどのイモベースのものをはじめ、ヨモギ、クルミ&クランベリーなど味は20種類以上。南庄産のタケノコが入った豚まん風のものなど、具入りヴァージョンも揃います。いずれも地元の食材を使い、素材の風味を生かした手作りの味。客家人らしい陽気なおばちゃんも、素敵な笑顔で良い味出してます!
~南庄大戲院 ナンヂュアンダーシーユエン~
南庄の黄金期に思いを馳せ、伝統の客家料理を
「南庄大戲院」は、1946年に開業した映画館。今は看板などに昔の面影を残しつつ、客家料理のレストランにリノベートされています。往年のポスターが壁を飾る店内では、料理を味わいながらモノクロ映画を鑑賞でき、レトロな雰囲気。南庄が最も華やかだった時代を彷彿とさせ、当時にタイムトリップしたような気分に浸れることでしょう。
店内で味わえるのは、客家料理。「塩辛い、風味が強い、油っこい」ことが特色で、白飯との相性が抜群です。客家の人々は山間を住みかとした開拓移民だったため、かつては肉体労働で体を酷使する人が多く、自然とこってりした濃い味の料理を好むようになったそう。さらに、トウガラシやショウガ、ニンニクなどの香味野菜も多用するので、風味も豊か。豚バラを醤油で煮込んだ「梅干扣肉(メイガンコウロウ)」やホルモンの千切りショウガ炒め「薑絲大腸(ジアンスーダーチャン)」など、白飯どころか、ビールも止まらぬ品々が多彩に揃います。
一方、山深い土地では食料が入手しづらかったことから、漬物や乾物などの保存食文化も発達しています。なかでもカラシ菜の一種で作る漬物「梅干菜(メイガンツァイ)」は客家料理の代表食材で、肉料理からスープまでさまざまメニューにアレンジされます。また、「客家小炒(コージアシアオチャオ)」などの料理に使われるスルメ干しは、旨みや香りを増すだけでなく、歯応えもしっかりしているため空腹になりにくいという利点があるそう。さすが、倹約家で勤勉な客家人! 乏しい食材を大切に、おいしく味わうための工夫が凝らされていますね。
今、注目はレトロモダンな「十三間老街」
のどかな町並みが広がる、南庄老街。近年はその風情に魅了され、移り住んでくる若者が増えています。そして、彼らのなかには古建築を利用してカフェやショップをオープンする人も。「十三間老街(シーサンジエンラオジエ)」は、そんなハイセンスな店が集まる注目のストリートです。進化する南庄の顔も、ぜひ楽しんでみて!
~好客在一起 ハオコーザイイーチー~
旅の記念に“幸福の青い鳥”を
まず、台中出身の女性デザイナーが開いたスーベニアショップ「好客在一起」を紹介しましょう。ここで販売しているのは、台湾の国鳥「ヤマムスメ(タイワンカササギ)」と客家のシンボル、アブラギリの花をモチーフにしたオリジナルグッズです。台湾でヤマムスメは“幸せを呼ぶ青い鳥”とされていて、プレゼントに最適。絵付け体験もできるので、好みのデザインに仕上げた“マイ・ヤマムスメ”をおみやげにすることもできますよ。
~芳山農吧 ファンシャンノンバー~
ローカル野菜で作るヘルシーカクテルが人気
観光客がグッと少なくなる夜の南庄には、地元の人しか知らないような穴場スポットがいくつもあります。そのひとつが、古民家バーの「芳山農吧」です。南庄出身の青年がUターンして開いた店で、発想力に富んだカクテルを味わえると評判。キュウリやトマトといった地元産の無農薬野菜をアレンジしたり、台湾固有の植物「台湾五葉松」やシソを素材にしたりと、ほかではなかなか飲めない1杯を楽しめるのが魅力です。アンティーク家具を配したインテリアもとっても素敵で、南庄らしい緩~い時間を過ごせます。
南庄は、新旧の魅力を一度に満喫できる贅沢な町。グルメ、ショッピング、民族文化と、3拍子が揃い、旅行者にとっては興味の尽きないスポットです。台湾人にも年々人気が高まっているため、週末は混雑必至。雰囲気をじっくり堪能するなら、平日が狙って行きましょう。
あわせて訪れるなら……
<天然発酵酢>
~唐婆醋 タンポーツー~
賴唐鴉(ライタンヤー)さんと奥様の高沁余(ガオチンユィ)さんが営む天然醸造酢の製造所&ショップ。おすすめは、もともと微生物学者だった高さんが考案した果実酢です。オリジナル製法によりフルーツ自体を発酵させており、フレーバーにはパインやナシ、スーパーフードとしても注目のマルベリー(桑の実)などを揃えています。どれも地元産のオーガニック食材を使い、じっくり1年かけて発酵・熟成させているので香りが高く、口あたりもまろやか。高さんによれば、「成分も十分に分解されるので、栄養が体に吸収されやすくなる」とのことですよ。
<温泉ホテル>
~泰安觀止溫泉會館 ONSEN PAPAWAQA~
歩き疲れた体を癒すなら、やっぱり温泉……日本人なら、そう思う人も多いはず。南庄散策を満喫した後は、苗栗県の中央にあるこの温泉リゾートでくつろいでみてはいかが? 泰安温泉随一の規模を誇るスタイリッシュなホテルで、68ある客室はすべて温泉風呂付き。もちろん内湯、露天風呂(水着着用)、足湯が揃う大浴場も楽しめますが、いち押しは何といっても長さ65mの温泉インフィニティプールです。開放感たっぷりで、昼は雪覇連山の美観を、夜は満点の星空を借景に至福のひとときを過ごせますよ♪
最終回のVol.3はロマンチック街道をさらに南下し、アートと花の町・苗栗県三義(サンイー)を紹介します。アップをお楽しみに!
●Informaition
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(取材・文/田喜知 久美、取材協力/中華民國客家委員會)