福岡県と長崎県に挟まれる佐賀県。どのような印象をお持ちでしょうか?
佐賀はじつは食材の宝庫。そして古くから唐津・伊万里・有田などの陶磁器の産地としても知られています。2020年、アジアのトップシェフらが集う美食の祭典の舞台に決定した佐賀の食と器を巡る旅をご紹介します。
もちろん、海の幸!
まずは食。玄界灘と有明海というふたつの海に接することから、当然ですが海の幸が豊富です。全国的にも知られるのが「いかしゅうまい」。その発祥の店が唐津市呼子、山々と呼子大橋を望む絶好のロケーションに位置する海中レストラン「萬坊」です。
生け簀をぐるりと囲む店内はまるで水族館のよう。海を泳ぐ魚たちを眺めながら鮮魚をいただくという、洒落た仕掛けになっています。なんといっても呼子のイカはその透明感と甘みが身上。いかしゅうまいの前には、活き造りを楽しみましょう。
まだぴくぴくと動くイカはコリっとした食感のあとに何とも言えぬ旨みが口に広がります。刺身で楽しんだあと、げそは、天ぷらや塩焼きで。熱を加えることで甘みがぐっと引き立ちます。そしていかしゅうまいは蒸したものと揚げたもの。ビールが進むお味です。
萬坊 海中レストラン
さらに唐津の名店「つく田」で鮨を堪能してはいかがでしょう。
「つく田」は格付け本「ミシュランガイド福岡・佐賀・長崎2019特別版」に2つ星として紹介されています。ご主人の松尾雄二さんはこの道25年以上のベテラン。ほとんどが唐津をはじめとする佐賀産という鮨種は締めたり、漬けたりと仕事が加えられています。
なんといってもイカは唐津が最高とのこと。一貫一貫に唸りながら、地魚の力を感じてください。
佐賀牛や嬉野茶、魚だけじゃないよ!
さて、魚だけで終わらないのが佐賀の食の魅力。牛は佐賀牛、米は佐賀米、お茶は嬉野茶。なかでも佐賀牛は出荷頭数が限られるブランド牛で、東京ではなかなかお目にかかれないお牛様です。この良質の牛の生育に役立っているのが、米どころ佐賀の美味しいお米。栄養価の高い稲わらがたっぷり与えられているのです。
佐賀牛の美味しさを味わい尽くすなら、唐津市内にある「佐賀牛なかむら」がおすすめ。直営牧場で大切に育てられた佐賀牛のステーキは、噛めば噛むほど濃厚な旨みが広がりながらも、後味はすっきり。見事の一言です。
佐賀牛なかむら
もうここまで読んだだけでおなかがいっぱい!という方にはぜひ、食後の嬉野茶を。嬉野市では約500年前から茶の栽培が行なわれ、釜炒り茶の製造方法で知られています。釜炒り茶とは、生の茶葉から煎茶を作る最初の加熱工程が「蒸す」ではなく、「炒る」こと。蒸してお茶をつくる方が一般的ですが、釜炒り茶の製法は、中国の明時代(1368-1644年)に伝わったとされています。嬉野茶の特徴はとにかく香りがいいこと。きちんと急須で淹れた美味しいお茶を味わってみてください。
嬉野温泉ではお茶をとことん楽しむティーツーリズムを展開。豊かな自然に抱かれる茶畑を巡り、お茶の魅力を堪能できます。嬉野にはもうひとつ、「温泉湯どうふ」という名物も。温泉で煮込んだとろとろのお豆腐は、それまでの湯豆腐の概念を覆してくれることでしょう。
料理を引き立てる美しい有田焼
そして、こんなに素晴らしい食の数々を引き立ててくれるのが美しい器です。有田にある李荘(りそう)窯を訪ねました。
有田焼は、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に連れ帰った陶工と、良質な陶石により発展、約400年の歴史を誇る磁器を指します。江戸時代には積出港の伊万里湾の名から、伊万里焼とも呼ばれていました。李荘窯は、陶祖・李参平の居住跡に開業、古典のなかにもモダンなデザインを加えた染付や、斬新な形状の白磁など、個性的な器を造り続けています。
近年は一流シェフやデザイナーがその器にほれ込み、自身のレストランで用いるなど、世界中から注目を集めています。4代目の寺内信二さんは、伝統と革新の両立を掲げ、かつて世界を席巻した有田の技術と美意識を再認識してほしいと、積極的に海外でコレクションなどを開いています。そして、シェフやレストラン向けの商品提案を行なう「arita-plus」のメンバーとして、究極の食器を模索しています。
「器は料理の着物」と語った北大路魯山人の言葉のように、美味しい料理を盛りたて、引き上げ、より魅力的にする器。その器を見るだけで料理のアイディアが浮かぶ、そんな素敵な器に出会えます。コンビニのお惣菜も、気に入った器に盛れば、5倍も10倍も美味しくなりますよ!
李荘窯
有田では春の陶器市のほか、秋に陶磁器まつりを開催。今年は11月20日~24日に開かれます。紅葉を愛でながらゆっくり散策し、お気に入りの器を見つけて、美味しい食も堪能する、そんな素敵な佐賀の旅を!
そして来る2020年3月、佐賀県武雄市を会場に、アジア圏のトップシェフらが一堂に会する「アジアベストレストラン50」が開催されます。「食のアカデミー賞」と呼ばれる各国の優れたレストランを選ぶ国際イベントのアジア版! これまでシンガポールやバンコク、マカオなどアジアを代表する国際観光都市で開催され、世界中のフーディストの注目を集めてきました。国内初開催の華やかな舞台でも佐賀の食材と器が活躍すること間違いありません!! 関屋もなんとかこの祭典に潜入したい~~
(取材・文/関屋淳子)